紅柱石 andalusite Al2O(SiO4)  [戻る

斜方晶系 二軸性(−),2Vx=73〜86°α=1.629〜1.649 β=1.633〜1.653 γ=1.638〜1.660 γ-α=0.009〜0.011

形態:柱状や粒状。泥質ホルンフェルス中の斑状変晶をなすものは,4角柱状結晶の横断面の4角の対角線方向に黒色不透明の炭質物が包有されていることがあり,それは「空晶石」という。また,泥質ホルンフェルス中のものは通常,周囲や割れ目からややセリサイト化し,その斑状変晶全体がその仮像になっていることもある。

色・多色性:無色。時に少量のFeやMnを含み,淡桃色で濃淡の弱い多色性が見られる。

双晶:認められない。

へき開:結晶の伸び(c軸)に対し平行な2方向のへき開が明瞭。伸びに直角な横断面では,その2方向のへき開は互いにほぼ直交する。

消光角:柱状のものは結晶の伸びに対し直消光。
伸長:結晶の伸びに対し負。


累帯構造:まれに淡桃(少量のFeやMnを含む)と無色の部分が累帯構造をなす。

産状

主に泥質ホルンフェルス中に産し,断面がほぼ正方形の柱状の斑状変晶をなし,結晶周囲や割れ目に沿ってセリサイト化し,結晶全体がその仮像になっている場合も多い。
また,泥岩起源の片麻岩に粒状や自形の正方形柱状の結晶をなす場合もあり,ケイ線石,アルマンディンなどを伴う。

まれにパーアルミナスな組成の花こう岩中にケイ線石・アルマンディン・菫青石などと共に斑状をなすこともある。




泥質ホルンフェルス中の紅柱石 Ad:紅柱石,Bt:黒雲母,Qz:石英,Ms:白雲母
泥質ホルンフェルスにはこのようにやや白雲母化した紅柱石の斑状変晶が頻繁に見られ,時に完全に白雲母化したものも多い。変質していない部分は,石英などよりも屈折率が高い。これは結晶の伸び(c軸)に直角な横断面で,互いにほぼ直角に交わる2方向のへき開が明瞭。



片麻岩中の紅柱石 Ad:紅柱石,Bt:黒雲母,Qz:石英,Fs:長石類
泥岩・砂岩起源の片麻岩にはAl2SiO5鉱物がよく見られるが,片麻岩はホルンフェルスよりもやや高圧条件ででき,その多くはケイ線石である。しかし,時に紅柱石も見られ,斑状変晶のほか,このような小さな半自形の粒状集合体をなす。片麻岩中ではケイ線石と紅柱石の共存もまれではなく,両者の温度・圧力の安定領域をまたがった条件での変成作用を暗示する。しかし,Alを置換して少量存在するMn・Feが2相共存をもたらしている可能性もあり,また,変成流体中のAl・Siの化学種により安定領域外での晶出が起きた可能性もある。
紅柱石はケイ線石よりも干渉色が低い点,および,結晶の伸び(1方向に見えるへき開線の方向)に対し伸長が負である点が大きな違いである。またケイ線石は繊維状のことがあるが,紅柱石は繊維状にならない。なお,大陸同士の衝突帯であるヒマラヤ造山帯では片麻岩中に藍晶石が出現することがある。